しじみアーティスト

なかじままさえさん

島根県の宍道湖周辺では、しじみの貝殻に和布で装飾を施した「しじみの根付」作りが伝統的に受け継がれています。この技法でアクセサリーを制作している、なかじままさえさんも、子どもの頃におばあさまから、暮らしの中の手仕事としてしじみ細工を教わりました。故郷を離れた今、その技や文化を伝えたいという思いから「しじみちょう Made by Masae Nakajima」ブランドを立ち上げて活動。小金井から世界に向けて故郷の文化を発信します。

| 至極の一言 |

おばあちゃんから手仕事として伝わっている日本人の文化、暮らしの中で伝わってきたというバックグラウンドのストーリーを感じてほしい


島根・宍道湖のほとりに伝わる工芸をアクセサリーに

崎谷:しじみを使った装飾品、アクセサリーやアート作品を作っていらっしゃいます。しじみの根付は島根の伝統的なものなのですか?

なかじま:島根限定ではなく、しじみが獲れるところはあちこちであるらしいです。私の故郷は島根県松江市。しじみの獲れ高が日本一の宍道湖のほとりで育ちました。暮らしの中に貝殻があり、取っておいた好きな布で貝殻を包むということをしていて。おばあちゃんたちが根付やキーホルダーを作ったり、作り方を教えてくれたりしていました。私も小学生のときに教えてもらいました。子どもの頃から絵を描いたり手芸をしたりと、細かいものを作ることが好きだったんです。

崎谷:それがきっかけで作品に?

なかじま:実はしじみの根付は、あの頃から全然作っていなかったんです。故郷を離れて上京し、イラストレーターとして活動するなかで、なにか自分らしい表現ができないかと考えていたときにふと思い出しました。故郷に伝わるもの、おばあちゃんから教わった地元のものを引っ張ってきたいという思いもあって。最初に作ったのはアクセサリーではなく、カーテンのフックに吊り下げるものでした。イヤリングやブローチを作り出したのは、2年ほど前。マルシェに参加するようになり、「アクセサリーにしてみたら?」とお声かけいただいたのがきっかけで考えました。

崎谷:どのようにしじみを使っているんですか?

なかじま:宍道湖産のしじみを使った加工食品を作っている会社から、殻を分けてもらっています。洗浄、消毒、天日干しして、そこからひとつひとつ貝合わせをしていきます。全部表情が違うので、裏と表で3点がピタッと合うものを見つけるのが大変! きちんと合わせられたものだけ、アクセサリーになります。やすりで削り、穴を開けて……という作業もまた大変。2つに1つは割れますね。ペアが見つからなかったものは、ピンバッチなどになります。

崎谷:昔の遊びで、『源氏物語』の貝合わせがありましたよね。遊びになるくらい、合わない(笑)。地道な作業を経て、美しい作品に仕上がるんですね。


クラウドファンディングに成功し、パリで「JAPAN EXPO20」に出展

崎谷:2020年には、パリで開催された「JAPAN EXPO20」に出展されました。

なかじま:じつはその前年、占い師さんに「1月にこういう話がくるよ」と言われていたんです。本当にその年の1月にお声かけいただいたから「これだ!」と思いました。じゃあ乗るしかないと。

崎谷:鳥肌が立つ話ですね! クラウドファンディングにも成功されて。「こういう作業をしています」ということをイチから紹介されていたのがよかったです。

なかじま:パリに行く気はあったのですが、先立つものがない。どうしようかと思っていたら、クラウドファンディングのことをご紹介いただき、数日後にちょうど説明会があったんです。おかげさまで、私がこんなことをしているとすごくたくさんの方に知ってもらうことができました。島根推し・島根愛で活動していますが、実際に活動しているのは東京。なかなか島根の人には知ってもらえなかったのですが、島根の方をはじめ、ご縁のあるたくさんの方とつながり、知っていただき、ご支援いただきました。

崎谷:「JAPAN EXPO」に参加されてどうでしたか?

なかじま:すごい熱気でした! アニメやゲーム好きの方がメインのイベントで、コスプレだらけの中、“わび・さび”という伝統文化・伝統工芸のブースに出展させてもらいました。そもそも「しじみってなに?」というところからはじまり、「日本ではこんなにちっちゃい貝を食べるんだ」と驚かれ。そして興味を持ってもらったのは、”背景”でした。おばあちゃんから手仕事として伝わっている日本人の文化、暮らしの中で伝わってきたというバックグラウンドのストーリーにとても興味をもってもらえたんです。


作風が変化し、多様な素材を使った華やかな表現に

崎谷:初期の頃の作品には、イラストレーターとしての技術も注ぎ込んでいらっしゃいましたね。

なかじま:布でくるんだあと、アクリル絵の具を使って手描きでペイントしていました。千鳥柄や縁起のいい柄、出雲大社にちなんで縁結びの柄なども描いていたのですが、だんだん細かい作業は目がショボショボするようになって(笑)、描くのが難しくなってきたんです。

崎谷:弱点があると、ネガティブな部分をどうしていくかというアイデアが生まれて飛躍できるときがあります。「JAPAN EXPO」にチャレンジされて以来、作風が変わりましたね。

なかじま:フランスで買ったかわいいレースやリボン、日本の着物生地、スウェーデンのリネンやチェコビーズなど、いろいろな国のものを合わせ、多国籍感が出てきました。最近は「つながる」というテーマをメインに作っています。貝合わせをしないで、わざといろいろな大きさのものをつないだ作品もあります。

崎谷:初期の頃の作品よりも、華やかさと色気がありますよね。これまでは形を作ってきたけれど、最近は何かを表現しはじめたなと感じます。

なかじま:やはり第一印象で「素敵だな」と思って手に取っていただきたいので、バックグラウンドやスピリチュアルな内面はあまり出しすぎないようにと思ってきたのですが、ダダモレですよね(笑)。もういいや、出しちゃえと最近は開き直っています。

崎谷:どんどん進化しているので、すごく楽しみです。漆塗りの作品も、つややかで上品ですよね。

なかじま:漆作家で同級生でもある小島ゆりさんとのコラボで、しじみに漆を塗ってもらいました。こういう時期なので、オンラインでのワークショップも模索中。シニア向けのワークショップでは、針を一切使わずにできるよう、布ではなく和紙をちぎって張り子状にする手法を考えています。オンラインには時空を超えてつながれるよさがある。海外にも発信していきたいと思っています。


<インタビュー後記>

なかじまさんの「しじみちょう」は行った場所や触れ合う人々によって、どんどん変化していきます。「JAPAN EXPO」のあとの「しじみちょう」はぐっと大人な雰囲気になりました。

なかじまさんとは以前から知り合いでしたが、たまCHに出演いただき、話をするようになってから、人としても惹かれ、すっかりナカジマ魔力に魅了されてしまっています。まったく違う視点で物事を捉えていて、ハッとさせられることがあります。いつまでも見守っていきたい、そんな作風と人柄です。

なかじままさえさんProfile /
しじみアーティスト・イラストレーター。出身地である島根県出雲市の宍道湖周辺で伝統的に受け継がれてきた、しじみの根付作りからインスピレーションを得て、しじみの貝殻を使ったアクセサリーを開発。「しじみちょう Made by Masae Nakajima」のブランドを立ち上げ、東京都小金井市を拠点に創作。2019年にはクラウドファンディングを成功させ、フランス・パリで開催された「JAPAN EXPO20」に出展。イラストレーターとしてはアクリル絵具を中心に水彩、カラーインク、色鉛筆などを使用したノスタルジックな作風のイラストを制作している。

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