多摩地域の暮らしや仕事をより良いものにしようと活動を続けている森林さん。地域の問題に目を向けて、その解決の一助となるよう「株式会社シーズプレイス」を立ち上げて奮闘されています。働く母として、家事・育児・仕事での苦労を感じたことが、シーズプレイスの事業の根源になっています。そして、大変なのは母親だけではないと、社会の多様性に目を向けて活動をされています。

|至極の一言|
大変なのは母親だけじゃない

その人らしく笑顔で暮らして仕事にも集中できる社会に

崎谷:シーズプレイスを立ち上げて活動されていますが、どのような会社なのでしょうか。

森林:シーズプレイスは、「暮らす地域で幸せに育ち、働く人」を応援するために日々頑張っています。事業は主に4つに分かれており、創業、就業支援、保育園や児童発達支援、地域活性化事業をしています。そのほか、立川経済新聞の地域メディアの運営や商店街の活性化事業などの街づくりに関する事業を展開しています。ベースにあるのは、ダイバーシティで男女参画という価値観なので、男女共同参画センターを武蔵村山市と国立市で運営しています。

崎谷:もともとNPO法人の「ダイバーシティコミュ」の理事をされていたそうですが、こちらが今の会社の前身となっているのでしょうか。

森林:そうです。地域、ダイバーシティ、コミュニティとコミュニケーションで、「ダイバーシティコミュ」です。コミュニティとコミュニケーションの両方をかけて「コミュ」としています。地域でダイバーシティを推進していこうということで、ちょうど10年前の12月に設立しました。10周年目に入ったというところです。

崎谷:2020年には清瀬にコアワーキングスペース「ことりば」(写真下)を設立するなど、展開がとても早いですね。保育園施設の運営にもこだわりが感じられます。

コワーキングスペース「ことりは」https://kotoriba.csplace.com/

森林:そもそもの話をすると、男女共同参画センターからスタートしたのですが、そこは営利活動が出来ず、子供を預けて仕事をすることが難しいところでした。講座中など一時的に子供を預かる場所はあるのですが、仕事をしながら預けられる場所ではなかったのです。公共施設の限界を感じ、その仕組みを変えるよりは自分たちで作ったほうがいいかと思い、仕事場と保育園を併設したものを立ち上げました。
育児と仕事は切り分けないとなりません。納期が近いのに子供が泣いている、どうしようなど、子育てしながら仕事をしているといろんな場面がありますが、どこにも「ごめんなさい」をしなくてもいい環境が必要です。幸せに働ける人、幸せに育つ人を増やしていきたいです。

問題を解決しながらひとつひとつステップアップ

崎谷:活動的な森林さんは、20代の頃プロのミュージシャンだったと伺いましたが。

森林:短大を卒業後にオーディションを受け、本田美奈子さんのバンドで東芝からデビューしました。その頃は仕事の活動はしっかりとやりつつも、枠にはめられるのが嫌で、自分なりの表現を随所で出していた時代でした。一人でボーイッシュな格好、写真を撮るにも一人で少し離れていたりと、とがっていたように思います。

崎谷:当たり前と思われるものは、そうじゃないから変えようとするマインドが20代からあったのですね。30代は出産、フルタイム勤務を経験されたとか?

森林:産休と育休で7ヶ月だけ休んで仕事に復帰しました。その頃、モヤモヤしていたものが大きく2つありました。
一つは仕事のモヤモヤです。当時女性が多い職場で、仕事もハードなところでした。育休をとった人もおらず、両立できないから産後は家庭に入って辞めてしまうという人がほとんど。私は育休をとって環境を変えようと思いましたが、結局はそういう両立が出来ない環境でした。独身の女性ばかりだったので、理解も全く得られない状況です。
もう一つのモヤモヤが家庭内の家事や育児。女性だから家事も育児もやるのが当たり前という感覚。夫は帰ってきてもテレビを見て、持ち帰ってきた仕事もできている。その横で必死に子供の世話をして、ふと女性だからって、どうしてこんなに大変なのかなって。9時〜5時の仕事に変え、派遣社員や契約社員の立場で働きました。

その後、愚痴を言っていても仕方ない、行動して変えていこうと思い、自ら活動を始めました。子供が赤ちゃんの頃は、子供の周りを整える物理的な環境だけで良かったけれども、幼児になってくると社会性が出てくる。そうすると保育園自体の環境を良くしようと。小学校へ上がるとPTAや学校がある自治体に対して市民の立場で提言ができないかと思い、市民委員として地域活動始めました。
それが、NPO法人「ダイバーシティコミュ」に繋がっていきました。

女性だから男性だからではなく、いろんな人の視点を

崎谷:解決するべき課題が次から次へと見つかり、それが今の仕事に結び付いているようですね。

森林:ダイバーシティコミュの活動も、モヤモヤしているのは母親や女性だけではないと感じているからです。男性は稼いで家族を養わないとならないという、強いプレッシャーの中で仕事をしている人がいます。長時間労働も問題です。

崎谷:育休を取得した男性の中には、仕事みたいに育児をする方がいます。女性だと顔見たりしながら赤ん坊をあやしたりしますが、男性の場合は業務みたいにミルクあげたりと、こんな風に仕事みたいに育児ができるのだと思いました。男性が入ることで育児も違ってきますよね。

森林:女性だからこうするべき、男性だからこうということではなく、こうしたいという思いを共有できればといいと思います。例えば、最近は共働きの女性が増えているので状況も変わってきていると思いますが、女性ばかりのPTAの活動も男性が3〜4割入れば進め方も違ってくるはずです。男性視点、女性視点ではなく、いろんな人たちの視点が入ると違ってくると思います。
今後も課題を解決すべく、仕事、子育て、地域、ダイバーシティの4本柱で、活躍の場を広げていきたいと思っています。

Profile
立川市で保育園併設型ワーキングスペースの提供、起業支援などを行う「株式会社シーズプレイス」代表取締役。起業支援、事業サポートを行う「Cs TACHIKAWA」や地域の経済情報を発信する「立川経済新聞」を運営。出産、育児、PTAや市民委員などの経験を経て、NPO法人を設立したのち、「株式会社シーズプレイス」を立ち上げ。

投稿者

さきや 未央

★ 編集歴25年以上★「旅」と「子育て」雑誌を200冊編集★「観光とまちづくり」の取材を8年間★ 多摩の社長100人にインタビュー