小平市の職員として勤務する傍ら、小平市の観光スポットや人を題材にして作詞・作曲を手掛けるBig市川さん。2021年には「Φ(ファイ)」というアルバムをリリースしました。Φ(ファイ)は数学の空集合を意味する言葉で、答えのない中でどう未来を見つめていくかという思いを込めてつけたもの。公務員だからこそ、できることは何なのか、それを地域の中でどうやって実現していくのか、日々模索してチャレンジされています。

|至極の一言|
公務員の立場だからこそできる曲作りを

コロナ禍で思い悩む中、師匠から言われた「悩んでいるときこそ曲を書け」

崎谷:2021年にアルバム「Φ(ファイ)」を発売されました。これはどういった思いで作られたものでしょうか。

市川:若い頃は、私的なテーマで自由に曲作りし、音楽活動もしていましたが、ひと頃全く音楽に関わらない時期がありました。その後、小平を題材にした音楽を作り始めて10年経っています。今回のアルバムは、コロナ禍でいろんな人も自分も悩んできたという諸所の思いを込めて、曲を作ってみました。

崎谷:コロナという“事件”が起きて、どんなことで悩んでいたのでしょうか。思い悩む中で表現したいものが出てきたのでしょうか。

市川:普段は市内の店でお世話になり、そこで歌わせてもらったり、応援をしてもらったりしていましたが、コロナ禍で音楽関係の店舗は軒並み休業しました。その中で何かできないかをずっと考えていました。お店が上手くいく仕組みが作れないかと、一緒にラジオをやっている富永さんとそんな話をしながら、小平で音楽をやっている連中の動画を撮って、それを小平の地域に関係する音楽の紹介というコンセプトでまとめて、TAMER RECORDという名前で配信することになりました。動画配信やFBチャンネルにもあげています。歌う場がなくなっていく中で場を作りたいと、みんなを集めて投稿して行こうとなりました。常にうまく投稿できるかというと、まだまだですが、店に向けての応援メッセージを含めて活動しています。

崎谷:市川さんといえば、歌う公務員として知られていますが、今回は気合いを感じます。ギターの師匠である坂元さんにも励まされたとのことですが、どのような方でしょうか。

市川:坂元さんは、さだまさしさんのツアーに20年も帯同しているギタリストです。「北の国から」のギターを弾いていらっしゃる方で、その坂元さんにギターを習って何年も経ちます。普段はライブを多数こなしている方ですが、昨年はコロナで出来なかったこともあり、一緒に動画配信をしました。その番組の打ち上げの際、「地域の中で音楽をやっていたのが何もできなくなり、地域の方にも何かやってあげたいのに形にならない、お金が回る仕組みを作りたいのに何もできない」という悩みなんかを相談して、私的なことも含めていろいろモヤモヤしていたら、坂元さんからアドバイスがありました。「悩んでいるときこそ書いたほうがいい。せっかく音楽があるのだから」と。
昨年の冬から、悶々とした気持ちを題材にした曲や楽しく聴ける曲などいくつか書き始めました。坂元さんがプロデュースしてくださることになり、数ヶ月のレコーディングののち、完成しました。
曲を作る時は何かに取り憑かれたように作っています。頭の中にふっと思いついたメロディや言葉の断片を、この曲のどの部分で処理していこうか、成立してないけどどうしようか、などと、リハーサルを積み重ねながら、いいものが出来上がったなと感じており、達成感もあります。聞いてくださった方からいい曲だという声も届き、やってよかったと思っています。

地域に根ざした配信は、媒体としては弱くとも「機動力」がある

崎谷:FM854のラジオで「TWO-WHO Night」のパーソナリティを務めていらっしゃいますが、どんなメンバーでやられているのですか。

市川:もともと小平で「段差でダンサーズ」というふざけたグループがあったんですが、そこで声をかけていただいて入ったコミュニティです。FM西東京の時は市役所の後輩や大学生とかと一緒にやっていましたが、今は富永さんや他の仲間と一緒にやっています。地域には面白い人がいっぱいいます。損得なしで面白いことを一緒にやっていこうというノリでやっています。ダジャレや大人の恋愛トークありの、面白いラジオ番組です。
マスメディアではないので媒体としては弱いかと思いますが、地域から地域に根ざした発信は機動力があると思っています。そこら辺にいる人を番組に紹介できるという楽しさ、聞いている人も「あそこのあの人」「すれ違ったことのあるあの人が出ている!」というノリでラジオや動画配信で見たり聞けたりするのは、いいでしょうね。有名な方が入っていることは凄いことでもあるのだけど、地域の人が自分たちに近いスタンスで行う様々な活動を聞くのは、お互いに意味があることなのかなとも思います。

公務員の本音トーク番組と音楽活動がつなぐ民と官

崎谷:ラジオでも活躍されていますが、公務員だからこそ言えること、また慎まなくてはならないことがあると思います。公務員だからこそ見えるものってどのようなものがありますか。

市川:公務員は守秘義務があって、話せないことばかりです。でも、こういうことを言うと、地域の人が物事によりフラットに接することができるかもしれないなと思いながら喋っています。どうして公務員が喋るとフラットになるかというと、公務員は偏らない立場でいろんなものを数字で見ているからです。それぞれの専門的な分野で、それぞれの守備範囲を守りながら法律や数字的なもので、物事を公平に捉える感覚が身についています。
FBなどで皆さんがいろんなことについて書かれていらっしゃるけれども、自分の感情が突っ走っていたり、何かに対する反感であったりといろんなものが混ざり合った形でいろんな発言が出てきてしまっています。その中で、我々が赤裸々に思っていることを出すわけにはいかないですが、公務員は職場でそれぞれの分野をを把握して押さえながら仕事をしているんだってことを地域の人に伝えていくことは、地域の人にとってもマイナスなことではないはずだと考えています。

市役所に対する不満を聞く中で、役所の中ではさまざまな議論をして、成立しない話は外へ出せないから途中経過は表には出せない中、身を削って仕事をしているということを、自分がいいクッションになって伝えていけたら、公務員や市役所がもっと身近に感じていただけると感じています。みなさんの感じ方が変わるきっかけになればいいと思っています。

崎谷:数字的にも未来を考えないといけないですし、難しいですね。

市川:公私混同になって見える部分もありますでしょうね。意識的にそれを切り分け、公務員の仕事の中で得た知識をプライベートの部分でどのように出すか、それが大事だと思っています。
度が過ぎたり、どこかに肩入れをした話をすればお叱りを受けることもあると思いますが、好意的に捉えてくださる議員の方も少なからずいらっしゃいます。
以前、小学校の50周年の式典用の曲作りを依頼されたことがありました。式典で生徒が歌い、先生方や我々が演奏したところ、大変喜んでもらえました。学校に芝生があるのですが、学校の関係者やボランティアなどいろんな方が入って維持をしている芝生です。それをどう曲に盛り込むか練りました。子供達から芝生にまつわる思いを先生が集めてくださり、その思いを曲に詰めました。
50周年おめでとうということだけではなくて、いろんな人の思いを理解して作ったこと、これは公務員の立場だからできた曲だと思っています。

【Big市川さんProfile
小平市の職員として勤務する傍ら、TOKYO854(旧FMひがしくるめから移行)のラジオ番組「TWO-WHO Night」のパーソナリティを務める。2021年にはダイヤモンドリリーなどを含む全7曲を収録したアルバムをリリース。

投稿者

さきや 未央

★ 編集歴25年以上★「旅」と「子育て」雑誌を200冊編集★「観光とまちづくり」の取材を8年間★ 多摩の社長100人にインタビュー