2019年12月に東京都小金井市にオープンした地域密着型ホステル「ワイルドチェリーブロッサム(Wild Cherry Blossom-HOSTEL,TOKYO KOGANEI-/以下WCB)」の主ターゲットは外国人。コロナ禍で少し思惑は外れてしまったものの、ウクライナ、イタリア、メキシコ、アメリカ、トルコなどさまざまなバックグラウンドを持つ海外スタッフ、学生スタッフらと日本の伝統文化や多摩地域の魅力を再発見するイベントや取り組みを行っています。プロジェクト開発担当の大矢雄一郎さんにお話を伺いました。

|至極の一言|
「多摩地区に遊びに来るなら必ずここに寄りたい」と思われる魅力をもつ施設になりたい

コロナ禍でも出来ることに取り組み、地域の人が参加できるイベントも

崎谷:WCBはホテル事業とは違う新しい挑戦ということですが、ホステルとホテルは違うものなんですか?

大矢:厳密な定義はないのですが、特徴的なのは客室です。個室が中心のホテルに対し、ホステルは相部屋・ドミトリーが中心で、水回りも共同。そしていちばん顕著なのは、ゲストとの交流を重視しているところです。小金井でホステルというスタイルの事業に挑戦したのは、ひとつには多摩地域に外国人旅行者を多く取り入れていきたいという思いがありました。ホテルはどちらかというとお客様との距離感を大切にするイメージですが、ホステルではスタッフである我々が積極的にお客様とかかわり、外に出ていきます。この場所が、多摩地域の人や自然・歴史・文化を体感する旅の発着点となり、きっかけを作っていく——そういう施設を目指して2019年12月にオープンしました。

崎谷:オリンピックを見越してのオープンが、厳しい状況になってしまいました。

大矢:オープンして間もなく、コロナ禍になりました。外国人の方をもっと多くお迎えしたかったのですが、この厳しい状況が当面の間続くことが予想されましたので、インバウンド需要が復活するまでただ待っているのではなく、地域密着型のホステルとして、当初やろうと思い描いていたことを少しでも進めようと取り組んできました。
そのひとつが日本茶。立川市の「狭山園」さんのもとで茶摘み体験に参加したり勉強したりして知識を深め、ゲストに急須でお茶を入れるサービスをしています。また、オリジナル日本茶ギフトをお土産として販売しています。

崎谷:「英語カフェ」など、地域の人も参加できるイベントもやっていらっしゃいますね。

大矢:コロナ禍で、どうやってホステルと地域の接点を持っていくかを考えました。「英語カフェ」はオンラインイベントから始まり、毎週月曜日に少人数ですがお子様から大人まで参加できるイベントに発展しました。英語を学んでいる人は多いですが、実際に使う場面がないと聞いたので、ワンコイン(500円)で我々の外国人スタッフと交流を楽しんでもらえれば。英語を使ってホステルのことを知ってもらい、スタッフに親近感を持ってもらうことにもつながると考えました。
もう一つは、「はけの上のプチマルシェ」という国際交流イベントを開催しました。スタッフの出身国にちなんで、歴史・文化などの紹介やワークショップ、地域のキッチンカーの出店など、「地域の方々と一緒になって」企画しています。

崎谷:多摩にもインターナショナルな雰囲気の場所ができてうれしいです。「ルーフトップヨガ」には、私も参加させてもらいました。小平のヨガインストラクター・Namiさんが指導されているんですよね。小金井から都心のビルが一望できる屋上で、すごく心地よかったです。

大矢:それはよかったです。

ただの宿泊施設ではなく、「観光トランジット拠点」を目指す

崎谷:相部屋(ドミトリー)とはいえ、中は仕切って一人の空間にすることができるんですね。私が昔、海外でホステルを利用していたときには思い描けなかったほどきれい!快適さとカジュアルさが魅力ですね。

大矢:相部屋という形態も、1人5㎡ぐらいずつの空間をアコーディオンカーテンで仕切ることができます。余裕をもってプライベートな時間を過ごせる、独立性のあるキャビンスペースになっています。

崎谷:ラウンジもすごくよくて、一人でも過ごせるし、誰かいたら気軽に話せそうだし、大人数でも楽しく過ごせるような空間だなと思います。

大矢:リモートプランも販売させていただいているので、地域の方もリモートワークで利用できますよ。

崎谷:「観光トランジット拠点としての宿泊施設へ」という大きな目標をもって取り組んでいらっしゃるとか。

大矢:ただの宿泊施設というだけではいけないという思いがあるんです。小金井市はもともと観光地ではありませんが、多摩エリアを広くみていくと豊富な観光コンテンツはいっぱいある。それをつなぎ、ストーリーを作っていくということに、宿泊施設が取り組んでいく力をつけなければと考えています。大きな小金井市の地図をデザインした「UPDATE KOGANEI」という地図プロジェクトでは、スタッフ、ゲスト、地元の方といっしょに、そのときどきにいちばん必要な情報を更新していきます。

外国人スタッフ目線の情報発信にも力を入れる

崎谷:インスタグラムではインターナショナルな楽しい雰囲気が見られます。地域の人も積極的に来てもらえると、ホステルの楽しみ方を学べたり、日常の中で非日常を楽しめたり、新しい視点を持てそうですね。

大矢:WCBが開かれた場所であることを知っていただくために、SNSやYouTubeチャンネルでの情報発信を重視しています。それぞれのスタッフのキャラクターを想像できるようなカジュアルな投稿ですが、我々が楽しそうにしている様子が伝わると「こんなところなら行ってみようかな」と思える。そこを大切にしています。

崎谷:スタッフの方が外国人だから、動画も英語で配信できますよね。日本人は気づかなかった多摩の楽しみ方なども提案されていくのかなと楽しみです。

大矢:ありきたりのものや普段目にしているものも、違う視点で見ると、違う一面が見えるというアンテナが張れるようになりました。小金井は中央線沿線で便利な面と、武蔵野の緑や自然の豊かさを兼ね備えた絶好の場所。多摩エリアは住んで良し、働いて良しと、ポテンシャルの高いエリアです。そこにホステルが寄り添うとなると、どういうスタイルがいいのか。今後は自転車をからめた企画や、ワーケーションとのタイアップにもチャレンジしてみたい。欲張りな話ですが、WCBはただの宿泊施設・観光案内だけにとどまらず、「多摩地区に遊びに来るなら必ずここに寄りたい」と思われる魅力をもつ施設になりたいと思っています。

【大矢雄一郎さんProfile】
青森県出身。大学卒業後、Uターンで地方銀行に就職。「ザ・ウィンザーホテル洞爺」の経営再生ストーリーを描いた『プロジェクト・ホテル』(窪山哲雄著)に出会ったことが転機となり、同ホテルに転職し、ホテルのサービスに必要なホスピタリティマネージメントを学ぶ。2005年、「立川ワシントンホテル」(所有・運営/FromOne‘sHeart株式会社)の開業準備メンバーとして入社。2019年、小金井ホステルプロジェクト開発担当に。

「Wild Cherry Blossom-HOSTEL,TOKYO KOGANEI-」
【hostel】www.wildcherryblossomhostel.com
【corporate】www.gen-hostel.co.jp

Facebook  https://www.facebook.com/gen.koganei.9/photos
twitter  https://twitter.com/HostelWild
instagram  https://www.instagram.com/wildcherryblossomhostel/

投稿者

さきや 未央

★ 編集歴25年以上★「旅」と「子育て」雑誌を200冊編集★「観光とまちづくり」の取材を8年間★ 多摩の社長100人にインタビュー