日本茶アドバイザー

池谷香代子さん

「狭山園」は1951年に立川で創業した老舗日本茶販売店。3代目社長・池谷香代子さんは、2019年に初代創業の地へ改装移転リニューアルしたタイミングで、ご両親から事業を引き継ぎました。あえてご実家とは違う店で日本茶修業をした後、カナダでティーアドバイザーとして活躍し、南米・コロンビアで日本茶の販売・普及に努めてきた国際派。日本茶を知り、選び、おいしく味わっておもてなしする楽しみを知ってもらいたいという思いで活動を続けます。

|至極の一言|

日本茶をわくわくするエンターテインメントに

立川の老舗日本茶製造販売店3代目として事業を継承

崎谷:子ども向けや、インバウンド向けには英語やスペイン語でも、日本茶のワークショップをされているそうですね。

池谷:うちの店は創業69年目(取材時)になる日本茶小売販売店。地域のお客様に日本茶や茶器、海苔などを販売してきました。私は2018年に海外から帰国し、店をリニューアルするタイミングで3代目として事業継承したのですが、そのとき自分なりの企業理念を新たに作りました。日本茶を買うだけではなく、体験として楽しんでもらいたいと思い、「日本茶をわくわくするエンターテインメントに」ということを掲げています。

崎谷:池谷さんらしい企業理念ですね。

池谷:体験型というのがキーポイントなんですが、店に来ていただいたお客様にはウェルカムティーとして急須で一杯、日本茶をお出ししています。私は日本茶アドバイザーなので、日本茶の淹れ方のワークショップや産地別のお茶の試飲会なども行います。

崎谷:産地ごとのお茶の味の違い、わからないです。

池谷:日本茶って意外と集中して飲み比べたりしないですよね。それぞれのお茶の味わい、煎茶とほうじ茶の違い、どうやって作られているのか、みなさん知らずに何気なく飲んでいると思います。改めて日本茶の魅力を知ってほしくて、茶葉のブレンドや加工を体験してもらうイベントもあります。生産者の方に来てもらいお話を聞くこともありますよ。

崎谷:生産者側の知識というのもまた興味深いですね。

池谷:うちの店では年に1回は茶畑に行っています。先代からお付き合いのある、狭山茶と静岡茶の農家や製茶工場を取材して、「狭山園だより いっぷく」という新聞を作っているんです。記事を書くのはうちの父なのですが、お茶の作り方や、生産者の思いを新聞チラシに折り込んで伝える取り組みです。

崎谷:ストーリーを伝えていくということをしていらっしゃるんですね。SDGsのような社会貢献も意識されているそうで、茶殻を回収して肥料にして土に返す取り組みにはびっくりしました。

池谷:これは30年以上前に父と母が始めた取り組みなんです。ゴミを出さない、リサイクルに注目した商店街の活動に母が共感し、うちでは接客のときに出る茶殻がゴミになってしまうので、お客様からも回収して、肥料に再利用しています。茶殻はガーデニングや、消臭にも使えるんですよ。私が代表になってからも、ガラッと変えるのではなく、今まで続けてきたよいところは引き継ぎながら、新しいことにもチャレンジしていきたいと思っています。

海外での生活を経て日本で修業し、南米で起業も

崎谷:ところで、横田基地での勤務経験があるそうですね。どんなところなのか興味があります!

池谷:ニューヨークでの語学留学から帰国後、まだまだ海外のことも英語も勉強したいと思い、自宅から30分で通える横田基地の中のフィットネスセンターやフードコートで働きました。アメリカ空軍の方とそのご家族が住んでいて、中の雰囲気はアメリカそのもの。接客も英語です。フルタイムで働いていたので、ほとんど英語で話していたような生活でした。

崎谷:その後、京都の「一保堂茶舗」に4年半勤務されたということで、ギャップを感じそうですが、学ばれることも多かったのでは。

池谷:ずっと海外に行きたいとは考えていて、手に職を持って日本人の私にしかできないことをやりたい、身近にあった日本茶をもっと深く極めたいと思うようになったんです。まわりを見ないとわからないことがたくさんあるので、うちではなく別のお茶屋さんに入ることにしました。東京のデパートの店舗に配属され、本格的に日本茶の資格を取って勉強しながら働きました。「一保堂茶舗」は京都で300年を超える歴史のある老舗なのに、いろいろ新しいことをしていて、私が入って2~3年目のとき東京のお店でワークショップを始めたんです。こういうかたちでお茶を楽しんでもらえるんだなと印象的でした。

崎谷:その後、海外でティーアドバイザーのお仕事をされたんですね。日本人と海外の方では反応が違うところはありますか。

池谷:カナダ・モントリオールでスターバックスが手掛けるお茶専門店「TEAVANA」に勤めました。紅茶、プーアル茶、中国茶だけでも数十種類、南米やアフリカで飲まれているマテ茶やルイボスティ、ハーブティも扱っていました。日本茶も玉露、煎茶、抹茶、玄米茶といろいろ。フローラルな香りや、甘味料が入っているものも人気で、カジュアルなプレゼントや普段使いに、若い子にも売れていました。日本茶はヘルシーな飲み物というイメージで、東洋にあこがれて茶器を買い揃える方も多いですね。

崎谷:その後は南米・コロンビアで起業されたというから驚きます。

池谷:南米には友達もいたのでいろいろまわりましたが、コロンビアはコーヒーの国だし、可能性がないなら帰ろうと思っていました。日本人はあまり住んでいませんが、大学で日本語を勉強しているコロンビアの方がいたり、日本で働いた経験のある方がいたりしました。そういう現地で日本文化に興味のある人たちにお茶を飲んでもらうイベントを開催し、日本から持ってきたお茶を正しい淹れ方で出すと「おいしい」と言ってもらえたんです。そこで日本茶の輸入販売をするために会社を設立しました。

3つのポイントを抑えて、日本茶をおいしく淹れる

崎谷:本物のクオリティのお茶は海外の方もおいしいと思ってくださるんですね。今日は日本茶のおいしい淹れ方も教えてくださるということで。

池谷:お茶を淹れるときに大切なのは「お湯の温度」「茶葉の量」「待つ時間」の3つです。狭山の深蒸し茶の場合、適温は80℃。ポットのお湯をそのままでは熱いので、カップに注いで温度を下げます。熱すぎると渋み・苦み成分が出てしまい、ぬるすぎると渋みと甘みのバランスが悪くなります。1人分80㎖に対して、茶葉の量は2g(ティースプーンですりきり1杯ぐらい)。葉っぱが細かい深蒸し茶の待ち時間は30秒ほど。急須を揺らすと渋みと苦みが出るので、じっくり茶葉が開くのを待ち、少しずつ回しついで最後の一滴(ゴールデンドロップ)まで注ぎきると、2~4煎目ぐらいまでおいしく飲めます。

崎谷:見ているといい急須がほしくなります。ティーポットよりも平たい急須のほうがいいですか?

池谷:茶葉が急須の中で広がることで味わいも香りも広がるので、バスケット型や小さい茶こしが入っているものよりも、中に網が張ってあってスペースがあるものがおすすめです。うちでは常滑焼の急須を扱っています。手になじみやすく、最後の一滴まで注ぎきれるし、ふたがピタッとしまってたれてこないんですよ。茶器選びの時間も含めて、日本の文化。利便性だけを追求するのではなく、お茶のおいしさと共に、淹れる過程や、「あの人にこんなお茶を淹れてあげよう」という思いも含めて、お茶の楽しみを知っていただけたらと思っています。

Profile
日本茶インストラクター協会認定日本茶アドバイザー。日本茶輸出促進協会委嘱 南米・コロンビア日本茶大使。大学卒業後、ニューヨークに語学留学を経て横田基地に勤務。その後「京都・一保堂茶舗」で4年半勤務し日本茶について深く学ぶ。カナダ・モントリオールの「TEAVANA」でティーアドバイザーとして勤務し、2014年には南米コロンビアでお茶の販売・普及活動を始める。2018年に帰国後は、「狭山園」を拠点に国内外で様々な日本茶イベントを開催。

HP  https://sayamaen-japanesetea.com/
Facebook https://www.facebook.com/sayamaenippuku/

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