もんでんゆうこさんといえば、代表作は『広報たまちいき』1面のイラストマップ。描かれた人の個性と描く人の個性が融合した、温かみのある独特の雰囲気が持ち味です。影響を受けた恩師・永沢まことさんの教えで、必ず次の作品につながるように自分の名前を売る心意気でフリー画家の仕事をしてきました。縁が縁を呼び、仕事の幅を広げてきたもんでんさん。実は看護師という顔も併せ持ち、保育園の絵画講師として地域貢献にも目を向けています。
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至極の一言
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「納品して終わりではなく、必ず次の作品につながるように」
『広報たまちいき』1面をイラストマップで飾る
Photo | 『夢みるヨゾラ』(2020年)
縁が縁を呼び、「広報たまちいき』で「多摩歩き」を描くイラストマップのヒロインが誕生
崎谷
:私が編集を務めた2020年度版の小平のガイドブック(小冊子)『KODAIRA GREEN ROADを楽しむ10のこと』では、もんでんさんの実力をすごく発揮していただいて、とても楽しいものに仕上がりました。
もんでんさんというと、イラストマップを描くというイメージがありますが、最初からそうではなかったんですか?
もんでん
:景色を描いたり、ものを描いたりしていました。
『広報たまちいき』で「多摩歩き」を描くことになるきっかけは、
雑貨屋さんの外観を描かせてもらったこと
なんです。閉店してしまって今はないお店なのですが、そこのオーナーさんが、お金を出して私の絵を買ってくれた最初の方でした。
そのお店のお客様に、
日野駅界隈の寺社めぐりマップ
を企画している方がいて、イラストを描く人を探しているという話になったそうで、私を紹介してくれたんです。
そこで初めて、イラストマップを描かせてもらいました
。
崎谷
:わらしべ長者みたいなお話ですね。
もんでん
:そうですね。その寺社めぐりマップを、ちょうど日野市の街おこしに関わっていた方が見てくれて。
日野にはいいカフェがたくさんあることを知ってもらえる「カフェロードマップ」
を作ろうとされていて、たまたま通りかかったお寺で、貼ってあったマップを見て「これいいじゃん」という話になったそう。
そして、たまたまその方がよく利用するカフェのオーナーさんと私も仲良くさせてもらっていて、オーナーさんを通じてお会いすることになりました。
そうして作ったカフェロードマップが、
たましん(多摩信用金庫)さんで配られたものだった
んです。
Photo | 『広報たまちいき』より『多摩歩き / 府中市』
崎谷
:どんどん縁がつながって、ビッグチャンスにたどり着いたんですね。
もんでん
:そこでたましん(多摩信用金庫)の方とつながり、
「『広報たまちいき』というものを創刊する予定だけど1面のイラストマップをやりませんか?」「ぜひやらせてください!」という話に
。
創刊準備号は小平市のグリーンロードだったんです。午前中にお話をいただいて、その日の午後には花小金井にひとりで行って、初めての場所を初めてひとりで取材しました。
今も続く、イラストレーターの恩師・永沢まことさんとの交流
崎谷
:『広報たまちいき』に携わる前、看護師として働くかたわら、イラストレーターの永沢まことさんに師事されたそうですね。
もんでん
:永沢まこと先生と知り合ったのは2005年頃だったでしょうか。当時の先生の作品は、見ていると
私にも描けそうな気がすると思わせてくれる絵
で。その頃から私もペンで描くようになりました。
先生がニューヨークに何年か移住されていた頃の『ノンフィクション・ニューヨーク』という作品が好きなんです。
見ただけで私もニューヨークに行きたいと思えるような、心に響く作品です
。
崎谷
:現在も交流があるそうですね。
Photo | 『Red River』(2020年)
もんでん
:永沢まこと先生はお人柄もよく、絵を通じてすごくいろいろなことを教えていただきました。作品を見る力が鋭くて、手を抜いたところは必ず見抜かれるんです。
フリーランスの絵描きとして生き延びるには、
納品して終わりではなく、必ず次の作品につながるように自分の名前を売る気持ちでやらなきゃダメだということも教わりました
。
辛いときに直接お電話したことも。「そりゃそうだよ」と共感してくれて、「ならこうすればいいよ」と話してくれる、本当にやさしい先生です。毎回「多摩歩き」の作品も見ていただいていますが、「だんだんよくなっているけど、「だんだんよくなっているけど、ここはこうしたほうがいいね」と細かいところまで見てくださっています。
崎谷
:先生との信頼関係がすごくあるんだなと感じます。同じクリエイターとして、共感してくださる方がいると全然違いますよね。
もんでん
:気持ちがすごく楽になります。そろそろ自立しなくちゃいけないんですけど(笑)。いろいろなことを聞けるうちに聞いておきたいなと思って、今も親しくさせてもらっています。
Photo |
『ユキヒョウ』(2019年)
定年後に独学で陶芸家になった、努力家の父を見習いたい
崎谷
:もんでんさんのお父様も芸術家だとか?
もんでん
:陶芸で日常的に使うようなものを作っています。
会社員を定年退職してから、退職金で電気窯を買ったり全部揃えて工房を作った
んです。誰かに教わるでもなく、自分で図書館の本を借りてコピーしてまとめて、鉛筆でメモ書きして。努力家なところがあります。
崎谷
:クリエイティブな家庭環境で、お父様の影響も受けられたんですか?
Photo | 絵画講師をつとめる、保育園の壁画を製作
もんでん
:どうでしょう?
昔から上手に絵を描いたりはしてくれました
が、まさか定年後にすぐ仕事を離れて自分の好きなことにまっしぐらに行ってしまうとは驚きました。もう10~15年近くになりますが、県の展覧会にも積極的に出品して、知事賞を2回受賞しているんです。さらに今は審査員をしているそうで。審査するためには勉強しなければいけないからと、またコツコツ勉強している。そんな
真面目な父の遺伝子が私にもあれば、もうちょっと努力できるのに
…
と思います(笑)。
崎谷
:もんでんさんはきっちり、真面目な印象がありますよ!
崎谷
:保育園の絵画講師もされているとか。子どもたちにはクリエイティブな発想があっておもしろいのでは?
Photo | 園児も一緒に壁画を製作
もんでん
:2つの園に通わせてもらっています。子どもは本当に、単純にかわいいい!今はコロナで中止になってしまいましたが、再開を楽しみにしています。(2020年5月時点)
<インタビュー後記>
もんでんゆうこさんと永沢まこと先生の師弟関係のお話はぐっと胸に迫るものがありました。イラストマップといえば「もんでんゆうこ」という図式ができあがり、多摩でたくさんの仕事をしているのに、どこかいつも謙虚なもんでんさん。それは、永沢まこと先生がイラスト以外にも大切なことを教えているのだなと感じました。そんな師弟関係は本当にうらやましいです。もんでんゆうこさんのアーティストとしての姿勢が垣間見え、ちょっとジンとしましたね。もんでんゆうこさん、素敵な話をありがとうございました!
もんでんゆうこさんProfile /
線画家。東京都日野市在住。国立療養所刀根山病院付属専門学校卒業。看護師として勤務するかたわら、朝日カルチャー新宿「永沢まことスケッチ特別講座」を受講し、2005年より永沢まことさんに師事。現在、多摩信用金庫発行の広報誌『広報たまちいき』1面のイラストマップを手掛けるほか、こだいら観光まちづくり協会発行の『KODAIRA GREEN ROADを楽しむ10のこと』、JRの情報冊子『青梅線・五日市線の旅』等のイラストマップを作成。2009年パルテノン多摩美術公募展入選。2010年 上野の森美術館・日本の自然を描く展佳作。2011年 全日本アートサロン絵画大賞展入選。著書に『おとなのスケッチ塗り絵 世界で一番美しい街・愛らしい村~イギリス・スコットランド編~』『おとなのスケッチ塗り絵 世界で一番美しい街・愛らしい村~イタリア編~』(エムディエヌコーポレーション)。
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