シングルマザーとしてノルマのある営業仕事に追われていた若き日の船場奈津さん。価値観が大きく変化したきっかけは、実母の認知症発症でした。「好きなことをして自分の人生を生きる」ため、歌うことを再開。人生を共に歩むパートナーと音楽活動を始める傍ら、ヘナインストラクター、ヨーガ療法士などの資格を取得。心地よい心とからだのつながりをテーマに、音楽、ハーブ、ヨーガを三本柱に、その知識や歌声を必要とする人に届けています。
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至極の一言
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「自分の好きなことをやりなさい。自分の人生を生きなさい」
音楽とヨーガセラピー、ヘナで小平を癒す
Photo | Beyond Nine
音楽やヘナ、ヨーガに出会う前、苦しかったシングルマザー時代に学んだこと
崎谷
:「ヘナ&ハーブセラピーサロンmedelu(メデル)」「ヨーガセラピーKirana(キラナ)」を主宰し、公私ともにパートナーの黒須俊一郎さんと「Beyond Nine」として音楽活動もされています。今では順風満帆な日々ですが、その前は苦労されていたとか。
船場
:26歳でシングルマザーになったとき、娘は2歳半。それまではのほほんと生きている感じでしたが、小さな子どもを食べさせていかなければならなくなりました。それだけの収入を得るために、営業職についたんです。毎月ノルマのある仕事ですが、
とりあえず文句なんか言っていられない
と。30歳で母が認知症になるまで、足掛け4年働きました。
崎谷
:苦しい経験をどのようにポジティブに変えられたのでしょうか?
船場
:ノルマや相手があっての営業仕事は大変でしたが、
そこで得たことも大きかった
んです。「マージンが入ったらソファーを買おう」とか目標を見つけて、目の前ににんじんをぶら下げると、人は頑張れることがわかった(笑)。
やればできる。方法を自分なりに考えれば、それまでできなかったことができることもある。
それがわかったのは、自分の中で大きな変化でした。
Photo | ヘナ&ハーブセラピーサロンmedelu
にて
認知症の母とともに。
自分の好きなことから「Beyond Nine」の活動へ
自分の好きなことから「Beyond Nine」の活動へ
船場
:30歳のとき、母が認知症に。営業の仕事を休んで様子をみていましたが、治るものでもなく。営業職もつらかったので、「これで辞められる!」と思いました。ずっと自宅で介護していたわけでなく、子どもも小さかったのでグループホームに入ったのですが、施設を探しているときには「自分でめんどうを見ればいいじゃない」と門前払いもされ、絶望を経験しました。
崎谷
:大変な経験をされたんですね……。それをきっかけに、ご自身も介護ヘルパーの資格を取られましたね。
船場
:グループホームでは、いい職員の方との出会いもあって。
「自分の好きなことをやりなさい。自分の人生を生きなさい」
と言ってもらえたんです。母のかかった認知症を知りたくて介護ヘルパーを取得しました。
崎谷
:「好きなことを」ということで歌も再開したんですね。奈津さんの歌は心に響きます。
船場
:歌は10代の頃からやっていましたが、うまくできていなかったんです。30代の時に出会った歌の師匠に「とにかく歌うことを、
細く長くでいいから続けなさい
」「
どんな形でも、練習は絶対に裏切らない
」と言われて。今もその方のボイストレーニングを受けていますが、歌の師匠は上手に歌うだけでなく、表現することに長けている方で、深いところまで教わりました。歌うという行為そのものに大きな意味があると感じています。
崎谷
:「Beyond Nine」でもいっしょに活動するパートナーの黒須さんとは、いまや小平では有名なおしどり夫婦ですが(笑)どちらで出会われたんですか?
船場
:知り合いのつながりの中での出会いです。お互いに音楽はやっていましたが、私はもともと裏で声を出すような声楽をやっていて、黒須はロックやビートルズ好きと、ジャンルも違ったんです。そんな私たちが、音楽をやるようになって、今の「Beyond Nine」というスタイルになっていったという感じです。
ヘナやヨーガとの出会い。
ホッとできる場づくりを小平市で
ホッとできる場づくりを小平市で
崎谷
:さらにその後、ヘナやヨーガと出会ったんですね。ヘナは髪の毛を染めるイメージが強いんですが、「ヘナ&ハーブセラピーサロンmedelu」ではどのようなケアをされていますか?
船場
:ヘナは鎮静効果のあるハーブなんです。頭皮をやわらかくほぐし、脳を休める効果があるので、セラピーとして、ハーブパウダーをお湯でペーストしたものを頭皮パックしながら足湯をします。
Photo | ヘナでリラックスしながらヘアケア
頭からつま先まで緩めることで溜まっているものを排毒して体を整えます。アーユルヴェーダ理論がベースのセラピーです。
崎谷
:2016年に「ヨーガセラピーKirana」もオープンされて、その二年後にはヨーガ療法士の資格を取られました。長く勉強されたんですか?
船場
:3年半かけて勉強しました。
ヨーガセラピーは、身体に不具合がある方でも、お年寄りでも、誰でも簡単にできるように改良されたヨーガです
。心と身体のメカニズムを学んだヨーガ療法士は、個別カウンセリングでその人に合ったやり方を提供します。
認知症の母や、統合失調症の妹にも明らかにいいことがわかります。誰にとっても、緩めることは大切。何もしないでぼーっとする時間が今の人には少ないのですが、本来人間にはそういう時間がないと病気になってしまう。
ぼーっと自然の中に身を置く、ホッとする時間を作ってほしい
です。
崎谷
:今年、サロン兼ご自宅を引っ越されて、新しい拠点のお披露目では小平のお仲間が大集結していましたね。
船場
:1階がヘナサロン、2階にヨーガスペースと、創作家・デザイナーとしても活動する黒須のアトリエがあります。おうちギャラリーとしてときにはアトリエを開放して、生で彼の作品を見てもらうことで間近で創作を感じてもらったりできますね。コロナ禍で今は難しいですが、ゆっくり、お茶を飲みながら話をしたり、ほかのギャラリーではできない交流をできる場にしていきたいです。
<インタビュー後記>
奈津さんに、最後「花」(作詞・作曲里花)という歌を最後に歌っていただきました。
君のこぼしたその種は
すぐに芽を出さないかもしれないけど
いちばんいい時に いちばんいい場所で
花が咲く日がくるから
まさに、奈津さんの人生がぎゅっとつまった歌詞。大変なときもある。でも前を向いているといつか一番いいタイミングで花が開くのです。この歌は奈津さんの体験とも結びついているからこそ、聞いていると心をゆさぶれ、自分も花もきっと一番いいタイミングで花開くだろうと希望がわいてきます。奈津さん、素敵なお話と歌をありがとうございました!
船場奈津さんProfile/
東京都東大和市出身。小平市在住。高校卒業後、バンタンデザイン研究所にてインテリアコーディネートを学び、ガラス工房ショップ販売員を経て、22歳で結婚。24歳で長女出産。26歳でシングルマザーになり、営業職に。癒しを求めてボイストレーニングを再開。30歳のとき実母が認知症になり、大切なものの価値観が変化。介護ヘルパー資格を取得し、福祉施設に勤める。「歌うこと」を再開後、現在のパートナー・黒須俊一郎さんと出会い、2009年「Beyond Nine」を結成し本格的に音楽活動を始動。2014年にヘナインストラクターの資格を取得し、自宅で「ヘナ&ハーブセラピーサロンmedelu」をスタート。2016年にはヨガインストラクターとして「ヨーガセラピーKirana」も始め、2018年にヨーガ療法士資格を取得。心地よい心とからだのつながりを柱に、ライブ活動、ヘナサロン、ヨーガセラピー、それぞれを必要とする方とのご縁を大切に活動している。
ヘナ&ハーブセラピーサロン medelu HP
https://medelu.jimdofree.com/
ヨーガセラピーKirana
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