創業から半世紀以上、ていねいな手作業でこだわりの紙箱・貼箱を製作してきた加藤紙器製作所。「こんな形は無理でしょうか?」という要望に必ず応えようという姿勢を貫き続けたその技術を、近年はオリジナルブランド「TAKEMEKI」の商品作りにも注いでいます。お道具箱をはじめ、カラフルで遊び心あふれるデザイン性の高い箱は、容器としての立ち位置を越えた主役級の存在感。入れるものを想像するだけでも楽しい気持ちにさせてくれます。


|至極の一言|

中身を引き立てるのではなく、「箱が主役」の商品を作っている


「箱が主役」の発想で生まれたTAKEMEKI

崎谷:加藤紙器製作所では、オリジナルブランドで紙製の日用品雑貨を展開されていますね。ブランド名にもなっている「TAKEMEKI(タケメキ)」は、トキメキみたいで素敵な響きですが、どういう言葉ですか?

加藤:私たちは箱屋なので、まずは箱を売りたいということがあり。「箱」という字を分解すると「竹」「目」「木」なので、タケメキになりました。もともと加藤紙器製作所は和菓子などが入っている箱を製造していた会社です。組み立て式ではなく、和紙や小間紙を貼って作る手法で、受注を受けていろいろな箱を製造してきましたが、この技術を生かして自分たちの作る箱を商品として売ることはできないかと考えたんです。

崎谷:「TAKEMEKI」のサイトにはかわいい箱がたくさんありますね。何かを入れるためだけではなく、箱自体が主役みたいです。

加藤:まさに「箱を主役にして商品化したらどうかな」という発想で、まず商品化したのがお道具箱です。小学校では必ず使うので、買い替え需要もあり、家の中でもインテリアとして整理整頓に使えます。

崎谷:いろいろな色や柄がありますね。

Photo | TAKEMEKIのマスクケース

加藤:大きさも、小学校のお道具箱サイズから大きいA3サイズまでさまざまで、大人のお道具箱としても人気です。カラー展開は10色ぐらいですが、すべて中には柄があり、柄のセレクトは悩みました。社員のみんなと話し合い、子どもが好きそうなものから大人向けのものなどを揃えました。同じ柄でレターセットや、最近ではマスクケースも作っています。お子さんのお道具箱とセットで、ランドセルに常備しておくといいと思いますよ。。

紙が好きだからこそ悩む、紙選び

崎谷:加藤さんは、現社長の小嶋恵美子さんと姉妹で、ご両親から加藤紙器製作所を引き継がれたそうですね。

加藤:父は中学のときに亡くなり、その後は母が受け継いでいました。私たちは小さいときから夜中まで働く両親の姿、大変さを見ているので「やりたくないな」と思っていたのですが、いつの間にか継いでいました(笑)。どうして今ここにいるんだろう(笑)。

崎谷:紙が好きだからだと思いますよ。社員のみなさんも紙が好きな方ばかりですか?美大出身の方もいるそうですね。

Photo | チロルチョコの箱を作ってインスタグラムにアップ

加藤:社員のみんなも、本当に紙が好きな人たちが集まっています。紙は何千、何万と種類が多く、選ぶだけでも大変。選んだ紙によって、手触りも、糊の付きやすさも違うので、いちばん悩みます。結局は感性で選びますが、みんなそれぞれ違うので、いろいろな意見が出るとなかなかまとまりがつかず苦労するところです。

Photo | 漆をつかったミニサイズの箱

崎谷:冊子の編集をしていても、紙によって雰囲気がガラリと変わるのでわかります。紙の箱を作るとなると、形状やツヤ感など、いろいろな角度から選択肢が出てくるから難しいですね。

プレゼントを包むものから、プレゼントになるものに

崎谷:お道具箱のほかにも、ケーキ型やツールボックス型、漆を貼ったものもあるんですね。

加藤:漆のアイテムは、海外からも問い合わせがありますよ。小さな便箋と封筒など、荷物にならないお土産としてもいいと思います。

崎谷:プレゼントを包むための箱を作っていたところから、どんどん概念が変わって、お道具箱にマスクケース、レターセット……それ自体がプレゼントになるものも作るようになったんですね。

加藤:箱というと中身を引き立てるものというイメージですが、箱がいちばんになってほしいという思いで商品を作っています。まだまだ品数を増やしていきたい。ネット通販も企画して10年になりますが、若い社員の力でようやく知名度が出てきたところです。私たちの頭は年と共に固くなるけれど、時代は変わってきているので、若い人の意見を聞いて頭をほぐさないと(笑)。社員の意見を取り入れて、1人より2人、2人より3人でアイデアを出し合い、今後も商品展開を広げていきたいなと思っています。


<インタビュー後記>

神﨑さんには明確なビジョンがあり、そのために何をすべきか的確に分かっている――そんな印象をいつも受けます。そして、謄写版の作品をつくる技術だけでなく、謄写版を文化として掘り起こし、根付かせるための“精神力”“技術“を持っているのです。そういうクリエイターはなかなかいません。「謄写版よ、神﨑さんに見出してもらえてよかったね!」そう思ってしまいます。神﨑さん、いつも応援しています★

<プロフィール>

2006年、京都精華大学芸術学部版画専攻を卒業後、web制作会社に勤務しながら創作活動を開始。現在は謄写版を用いた版画制作をメインに、版画家として国内外で作品を発表している。2013年、和歌山県立近代美術館「謄写版の冒険」への出展他、グループ展への参加多数。「技術ピックアップ講座 謄写版」(2015年、町田市立国際版画美術館)講師を務めるなどワークショップを各地で開催。2019年11月、東京都小平市に「Atelier10-48(とうしゃ)」をオープン。

加藤紙器製作所

TAKEMEKI

投稿者

さきや 未央

★ 編集歴25年以上★「旅」と「子育て」雑誌を200冊編集★「観光とまちづくり」の取材を8年間★ 多摩の社長100人にインタビュー